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聖学院大学
人間福祉学部教授
医学博士 松村豪一
ホスピスとの出会い
更新日 2007/05/01
ホスピスにおける人格的医療
更新日 2007/06/07
ホスピスのルーツと現状および実体験から
更新日 2007/07/13
マザー・テレサが取り組んだホスピス、ホスピス誕生の理由と現状
更新日 2007/08/24
第5回
ガンに冒された友人の闘いぶり
更新日 2007/09/14
ホスピスのこれから
更新日 2008/02/01
聖学院大学人間福祉学部教授で医学博士の松村豪一先生による連載コラム開始!
「ホスピス」をテーマに全6回連載でお送りします。
第5回目はガンに冒された松村先生の友人の闘病についてです。
第5回 ガンに冒された友人の闘いぶり
更新日 2007/09/14
はじめに、親しい友人N氏の略歴を申し上げます。N氏は、1942年1月12日横浜で生まれました。1964年に大学卒業後、ある製薬会社に入社し、1985年には同社の販売部長となりました。会社の為にかつ自分の責任を果たすために、一心不乱に誠実に、日夜努力し2002年に同社を定年退職しています。社会活動としては、ガン患者と家族の会(どんぐりの会)副会長(この会は16年前に同会の患者がモンブラン登頂に成功したことで有名です)になり、2002年にさいたまにホスピスを作る会の事務員として働きました。
次に彼の病歴を述べますと、1995年のある時、体調がいつもと違うので、会社の産業医の勧めで精密検査を受けたところ、腹部に腫瘍が発見され、「すい臓ガンで肝臓に転移巣があり、余命は6ヶ月」との診断とガン告知を受けました。T医大ですい臓の半分以上と脾臓の摘出手術を受け、術後約1ヶ月単位の抗ガン剤治療を14回実施しました。が、リンパ節に3ヶ所および腹部に転移巣が見つかりました。
私が感心したのは、術後1日目にベッドから起き上がると、病棟の廊下でウォーキングを30分以上実施し、11階まである階段の昇り降りを課した事です。それは、彼が「人に本来備わっている免疫力を呼び覚まし、ガンに勝つためにはガン細胞と深く関わるキラーT細胞(リンパ球)やマクロファージ(大食細胞)の力を借りてガンを封じ込め、共生する必要がある。そのためにはまず第一に体力がなければできない」と考えたからです。さすがと思いました。
術後1ヶ月経過した頃、「治療を色々やっているが自分はもう駄目かもしれない」という死に対する不安感・恐怖感が噴出してきました。夜には「自分自身の死とはどういうものか」「火葬場の焼却炉で燃えるというのは死んでもわかるのだろうか、熱いのだろうか」といったような恐怖感に襲われたようです。死と結びついた連想や夢の内容は「真夜中で会社には誰もいない。そこへ遠い宇宙から自分の席に、自分自身が電話している」といったものだったようです。
彼のすい臓ガンと闘う姿勢は、「病気になった境遇の中で可能な事にチャレンジする事は、新たな気持ちを持つ事で心の活性化ができ、生きることへの自信に繋がる。今までやってこなかった事に50代で新たにチャレンジすることはとても勇気とエネルギーを要する。しかし、逆にそれが自分の生き様となって元気が出る」といったものでしたが、「いつまで生きられるだろうか」との不安はかなり長く続いたようです。
1995年に告知を受けてから11年間の闘病の後、彼は昨年8月にこの世を去りましたが、「余命半年」と告知された彼が11年もの間、ガンと闘い続けられたのは、N氏が「ガンから治りたい」との強い希望を持っていたからです。自分の「自然治癒力」を意識してパソコンなどの新しい事に挑戦し、病気に立ち向かう勇気を奮い立たせ、また、ガンの再発時に感じた死への不安に対して、心の活性化を図り(意思力・精神力の強靭さ)ウォーキングなどの体力作りに挑戦したことや、ガンに対して全身全霊で闘っている強烈な闘争魂、夫人や家族の暖かい励まし、どんぐりの会の支援があった事等が挙げられると思います。とても見事な闘いぶりでした。
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