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聖学院大学
人間福祉学部教授
医学博士 松村豪一
ホスピスとの出会い
更新日 2007/05/01
第2回
ホスピスにおける人格的医療
更新日 2007/06/07
ホスピスのルーツと現状および実体験から
更新日 2007/07/13
マザー・テレサが取り組んだホスピス、ホスピス誕生の理由と現状
更新日 2007/08/24
ガンに冒された友人の闘いぶり
更新日 2007/09/14
ホスピスのこれから
更新日 2008/02/01
聖学院大学人間福祉学部教授で医学博士の松村豪一先生による連載コラム開始!
「ホスピス」をテーマに全6回連載でお送りします。
第2回目はホスピスにおける人格的医療についてです。
第2回 ホスピスにおける人格的医療
更新日 2007/06/07
前回、終末期を迎えた患者を診療するには、全人的ケアと「人格的医療」が大切であると申しました。
まず、全人的ケアとは、患者を臨床の実践の中でいかに全人的に理解し、全人的にお世話するかということです。もう少し詳しく述べますと、病気からの解放を図ると共に、その患者が持っている身体・心や患者を取り巻いている社会環境・家族・経済状態といった患者の内面や外面を含む全てを理解し、積極的な健康づくりに貢献し、患者個々のQOL(生命の質)の向上に役立たせるお世話をする事です。
次に「人格的医療」というのは、患者を一人の人格者とみなし、全人的ケアを基本としてその患者の身体の病だけでなく、心や魂への配慮を細やかにしていく、いわゆる「患者に寄り添う医療」の事です。
次に実際例を述べます。患者は、長崎大学医学部付属病院脳神経外科で私が受け持った54歳の女性です。クモ膜下出血を起こし、救急車で搬送され、諸検査の結果、脳動脈瘤破裂と診断され、直ちに手術を実施し救命できた方です。しかし、術後右足と右手に軽い麻痺と左の視力低下が残りました。
退院後、脳神経外科外来で診察中、何となくいつもと様子がおかしく、何か話したげでした。「何か話したい事でもありますか? 後3人で外来が終わるので、時間を作りましょうか?」と聞きますと、彼女がうなずいたので、外来終了後に個人面談を致しました。
彼女の話を要約しますと「退院してから、長男が結婚しましたので、私たち夫婦は離れの2階に住み、私は嫁の炊事の手伝いをしていますが、動作がのろく、嫁からいつも叱られてばかりです。もし、今日、先生に話を聞いてもらえなければ帰りに死のうと心に決めました。」と言ったのです。私はびっくりしてしまいました。
私は「やがてお嫁さんも、あなたの右手や左の目が不自由なために仕事が早く出来ない理由が分かってくれるだろうし、お孫さんの誕生といった嬉しいことも起こるでしょうから、そんなに興奮しないで気長に待ってみてはどうだろうか。」などと種々説得した結果、ようやく納得して帰宅しましたが、彼女は自分から『話を聞いて欲しい』と私に言ったわけではありません。が、もし私が、彼女のいつもとは違うそわそわした態度を見逃していたら、帰りに自殺していたのは確実です。
患者に言葉がなくても、全身から訴えている物を受けとめる「人格的医療」(患者に寄り添う医療)の大切さを彼女から教えられました。この「人格的医療」(患者に寄り添う医療)はホスピスにおいても大切ではないかと考えます。
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